What is biomimicry?

バイオミミクリーとは何か?
なぜ、今必要なのか?どんな可能性があるのか?

バイオミミクリーとは?

自然界の叡智から
持続可能なデザインやシステムを創る

バイオミミクリーとは、ギリシャ語で「生命」を意味するbiosと「模倣」を意味するmimesisを組み合わせた造語です。生命・自然界における形状、プロセス、生態系から学び、注意深く模倣していくことで、より持続可能なデザインイノベーションを生み出すことです。単に私たち人間社会の便利さを追求するために自然界の智慧を利用するのではなく、私たち自身が生態系の存在そのものであり、「いかに私たちが自然界にフィットしていくか?」というあり方が土台となります。循環・再生型の社会に向けて、38億年の長い年月で培った自然界の存在と叡智に敬意を払い、学ばせて頂くことがバイオミミクリーの本質です。

なぜ、
バイオミミクリーが
必要なのか?

私たち人類は、自然界の美しく芸術的なサイクルの中で繁栄し、豊かさと幸せを享受してきました。その過程で化石燃料は必要でしたし、森林を伐採したり、多くの自然資本を生きるために頂いてきました。そのこと自体を否定するつもりはありません。自然界の遷移と同様に必要なプロセスであり、今も一部として必要な現実だと思います。

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私たち人類が直面している課題

しかしながら、人間主体のあり方、資源は無限に存在するというメンタルモデル、技術によって全てが解決できるという傲りが、地球の自浄能力を超えた経済活動を生み出してしまいました。その結果として、あらゆる国と地域で、地球システムの不具合のシグナルが現れはじめています。

日本でも、毎年のように「これまで経験したことがない」という形容詞がついた集中豪雨、「観測史上初」という極端な天候が日常化しています。この文章を書いている今日も、アメリカの中南部で複数の巨大竜巻が発生し、多くの方々が亡くなっています。もはや、気候変動は私たちの生活、ビジネス、そして命に直接影響する時代となりました。

どこか遠い世界ではなく暮らしの中で起きていること

プラスチックごみによる海洋汚染も私たちが作り出してしまった社会課題の一つです。その昔、カンボジアのゴミ山を訪れた時、息もできないほどの空気の中で生活している子ども達、行き場を失った大量のゴミ山の現実を知りました。台湾でビーチクリーニングに参加した時、砂浜の砂を手ですくうと、赤、青、黄色とカラフルなマイクロプラスチックがどの砂にも混じっていました。

先日、息子と"ちりめんじゃこ"の中に入っている様々な小さな生き物を虫眼鏡を使って観察していた時には、プラスチックの破片が混入していることに言葉を失いました。プラスチック問題はどこか遠い世界の話ではなく、巡り巡って、既に私たちの日常生活、そして自分たちの体の中に入り込んでいるのです。

未来の世代に対して果たす責任

もちろん、安易にプラスチックの存在を否定する話ではありません。ただ、プラネタリー・バウンダリーが示す通り、地球の自浄能力のキャパシティ、臨界点は既に限界を超えています。そんな中、SDGsバッジを胸につけるだけ、自社の事業活動に対して17のゴールを当てはめてアピールしているだけでは何も変わらないのです。ブーム的で表面的なSDGs活動から、本質的なサステナビリティ変革に向けて動き出す時です。

私たちの世代が循環型・再生型の未来を本気で考え、意思決定し行動していくことが、未来の世代に対して果たす責任なのではないでしょうか。では、「どうやって?」その答えの一つがバイオミミクリーなのです。

未来の技術

38億年の叡智からのイノベーション

バイオミミクリーとは、自然の叡智からイノベーションを生み出す「考え方」であり、「手法」であり、「あり方」です。自然界にある形状、プロセス、システムから循環型・再生型のデザインやシステム変容(システミックチェンジ)を起こすアプローチです。

なぜ、自然の叡智から、私たちが直面する社会課題やビジネス課題の解決が見つかる可能性があるのでしょうか?

それは、大いなる自然界は38億年の進化の過程を経て、何が機能するのか?何が適切なのか?そして何が地球上に残るかを経験し学んできたからです。失敗と成功を繰り返してきたまさに地球のR&D(研究開発)部門とも言えましょう。そこには、ゴミという概念はなく、限られた領域の中で資源を循環させ、再生し、生命のバトンを渡し続けながら繁栄してきたメンターとしての教えが眠っているのです。

38億年の進化を経て、
大いなる自然の世界は
この地球上で何が有効で、
何が適切で、
何が持続するかを学んできました

Biomimicry3.8 共同創設者
ジャニン・ベニュス

"After 3.8 billion years of evolution, nature has learned what works, what is appropriate, and what lasts here on earth."

Janine Benyus, Co-founder of Biomimicry 3.8

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自然に問いを立てる

例えば、「気候変動に伴う効率的な水源の確保」という社会課題解決に向き合ったとしましょう。従来型の問題解決思考やフレームワークの延長で、単に問題をFIXしていくやり方では限界が来るはずです。なぜなら、多くの社会課題は人間の手でコントロールできる範囲を超えたものだからです。

バイオミミクリーは、人間の知恵を一旦鎮めることから始まります。例えば、降雨量の少ない砂漠地域に住む生命に意識を向けてみましょう。アフリカのナミブ砂漠に生息する甲虫(Onymacris unguicularis)は、大気中の水蒸気を独特の表皮の素材とデザインと動きで収集する知恵があります。
モロクトカゲ(Moloch horridus)は、小さな水溜りに足を入れるだけで、全身に水分を供給する不思議な能力があります。

もし、私たちが彼らに敬意を払い、注意深く意識を向けて観察したら一体何に気がつくのでしょうか?

"今日我々の直面する重要な問題は、
その問題をつくったときと同じ考えのレベルで解決することはできない。"

- Albert Einstein

バイオミミクリー思考は「自然界はどうやって少ない水を集め、吸収するのか?」という問いを立てて進めていきます。もし、自然の叡智に対して問いを立て、拡散と収束の思考プロセスを進めていったら、どんなイノベーションの種に出会えるでしょうか?

ナビブ砂漠のような雨が全く降らない地域で進化を遂げてきた生き物たちの機能から、私たちは何を学び、どう活かすことができるでしょうか?

"How does nature solve the problem?"

きっとそこには、私たち人間には想像もつかなかったような知恵と経験と能力で満たされたマジカルワールドが待っているはずです。まさにバイオミミクリーが人間社会の課題と自然の叡智との橋渡しの役割となり得るのです。

多様性の
掛け算を一緒に!

自身の専門性が秘めている可能性

バイオミミクリーは一部の技術者であったり、アカデミックな専門領域の人たちだけに必要な考え方ではありません。全てのビジネスパーソン、そして子どもたちにも必要な意識と思考の領域です。

私は組織開発・人材育成のプロであり、生物学やエンジニアリングのバックグラウンドは一切なく、バイオミミクリーの学びをスタートしました。大学院の同級生たちも、建築家、デザイナー、ITプログラマー、看護師、先生、環境活動家など様々な人が学んでおりました。チームでプロジェクトを進めていく上でも、多様性溢れるメンバーの掛け算から、イノベーティブな発想が生まれていったことを実感しています。

バイオミミクリーを切り口に、もし多様な専門家が集い、掛け算が行われたらきっと無限の可能性が広がっていくことでしょう。私たちはこの社団法人を通して、そんな掛け算のイノベーションを皆さんと一緒に創造していきたいと願っています。

あなたの専門性と、
どの様な掛け算が生まれますか?

Biomimicry ×「あなたの専門領域」= サステナブルイノベーション